倉敷南3年次
3年次_校長最後の授業「新しい時代を生きる皆さんへ」
投稿日:2026年6月25日(木曜日)6月24日(水)のLHRの時間に、3年次生を対象に、本校校長の平野わかば先生による講演会が行われました。演題は 「新しい時代を生きる皆さんへ」。これまでの教員人生で培われた経験と、生物の先生ならではの生物学的な視点から考える「幸せ」について、熱意あふれる講義をしていただきました。
講演の前半では、先生ご自身の教員人生を振り返りながら、数々の困難や試練をどのように乗り越えてきたのかを、具体的なエピソードを交えて語ってくださいました。


その中で先生は、
- 生徒は教師の知識だけでなく「人間性」を見ていること
- 「私」を主語にして自分の言葉で語ること
- 困難から逃げず、正面から向き合う覚悟を持つこと
- 人は真剣に向き合えば必ず変容すること
など、多くの学びを伝えてくださいました。また、学校のリーダーとして先生方を巻き込みながら長期的な視点で学校改革に取り組んできた経験や、校長として本校をより良い学校へと発展させるために続けてきた挑戦についてもお話しくださいました。「ピンチを乗り越えるためには、あきらめないことが大切です。」そう力強く語られた先生の好きな言葉は、「トコトンヤレ」だそうです。
講演を準備する中で先生が改めて考えたのは、「私は何を目指して教員をしてきたのか」「教員のゴールとは何なのか」という問いでした。そしてたどり着いた答えは「生徒が幸せをつかみながら人生を歩めるよう支援すること」であると語られました。


後半では、生物学の視点から「人はなぜ幸せになれないのか」という興味深いテーマについて講義が行われました。まず、東京大学の小林武彦教授の研究から、人類の遺伝子は狩猟採集時代から大きく進化していない一方で、私たちを取り巻く環境は情報化社会へと急激に変化していることを説明されました。例えば、
- 承認欲求
- 狩猟採集時代:獲物を得るなど共同体への貢献
- 現代:SNSでの「いいね」や表面的な評価
- 他者との比較
- 狩猟採集時代:立場を明確にし、不必要な争いを避けるため
- 現代:終わりのない競争や比較
- 食行動
- 狩猟採集時代:生き延びるために必要
- 現代:過食や肥満の要因にもなる
このように、人間の心と体は昔の環境に適応したままであり、現代社会との間に「ミスマッチ」が生じていることが、さまざまな生きづらさにつながっていると説明されました。そして、そのミスマッチを解決するためには、
- 不必要な比較を減らす
- 対面でのつながりを大切にする
- 自分の行動や目標の意味を可視化する
など、自ら環境をデザインすることが重要であると話されました。


講義の最後には、Society5.0が目指す「人間中心のスマート社会」に触れながら、テクノロジーとの向き合い方について述べられました。「テクノロジーの使い方は遺伝子には刻まれていない。」「だからこそ、便利さのためだけではなく、幸福を追求するためにテクノロジーを活用することが大切である」と語られました。その一例としてiPS細胞を取り上げ、「iPS細胞は本当に人を幸せにするのか」という問いを投げかけました。さらに、「万能細胞として最初に発見されたのはiPS細胞なのか」という問いから、実はES細胞が先に存在していたこと、そしてiPS細胞はES細胞が抱えていた倫理的課題を克服するために開発されたことについても説明されました。
科学技術の発展は、一方で新たな課題も生み出します。体の一部の細胞から個体そのものが作られる可能性など、生命倫理に関わる問題についても触れながら、「人類全体の幸せを考え、何が正しいのかを判断できる力を身につけることが大切である」と力強い言葉で締めくくられました。


変化の激しい時代を生きる3年次生にとって、これからの人生や進路について深く考える貴重な機会となりました。今回の講演で学んだ「幸せとは何か」「どのように生きるべきか」という問いを胸に、一人ひとりが自らの未来を切り拓いてくれることを期待しています。