倉敷南同窓会

同窓生からの寄稿

投稿日:2025年6月18日(水曜日)

本校同窓生(13期)で、現在岡山大学農学部及び大学院で研究・教育に携わっておられる守屋央朗 教授から寄せられた文章を紹介します。

高校のことを思い出しながら
岡山大学農学部 守屋 央朗(13期)

1.南高時代のこと
先日、勤務先である岡山大学農学部の紹介のために、母校・倉敷南高校を訪ねました。1989年に岡山を出て、2009年に戻り、2014年には卒業25年の同窓会もありましたが、校舎に入り、現役の後輩と話したのはこれが初めてでした。その際に原田先生(7期生)から「高校時代の思い出を書いてほしい」と依頼され、いまこの原稿を書いています。

正直に言うと、南高校での高校生活を「楽しかった」と感じた記憶はあまりありません。私は児島の出身で(当時「5%」と呼ばれていました)、バスと自転車で通っていました。放課後や休日に友達とつるんで遊んだ記憶はほとんどなく、部活も17時には終了。「直ちに校門から出なさい」というアナウンスが流れる学校でした。
当時の倉敷四校は進学率を競っていて、とにかく勉強中心。それなりに頑張りながら、毎日をこなしていた、という印象のほうが強いです。

とはいえ、何もなかったわけではありません。印象に残っているのは、同じ児島から通っていた佐藤博之君(自治医大へ進学)。先生方のものまねで自作のラジオ番組をつくって、カセットテープ(!)で聞かせてくれていました。ものすごく面白くて、今なら間違いなくYouTuberになっていたでしょう。

私は、部活ではハンドボール部のキャプテンをやっていましたし、文化祭ではバンドのボーカルや団旗を振る役もやりました。授業中に寝たり、宿題を忘れて廊下に立たされたり。傍から見れば普通に高校生活を送っているように見えたかもしれません。でも、自分の中ではどこか傍観しているような感覚があり、没入するような楽しさは感じていなかったように思います。

2.生物との出会いと進学後の生活
高校では生物の授業が特に好きでした。というより、子どもの頃から生き物が好きで、幼稚園では「昆虫はかせ」と呼ばれ、図鑑やNHK教育テレビを見ながら自然について調べていました。高校で「生物学」という教科に出会ったとき、「これは自分が昔からやってきたことだ」と感じ、理学部の生物学科に進学しました。

一方で、数学はずっと苦手でした。三年生のときに先生方に補習してもらった記憶はありますが、今でも数学のテストで悪い点を取る夢を見るくらいには、苦手意識があります。息子の様子を見ていても、数学は「素養」だなと感じます。

大学ではボート部に入り、授業にはあまり出ず、ボートばかり漕いでいました。最近の学生たちはとても真面目で、しっかり授業に出て将来のことを考えている印象です。私たちの時代(バブル期)が楽観的すぎた反動か、今の若者は本当に堅実です。親としてはその方が安心できますし、自分のような人生は子どもには勧められません。

3.働くことを想像できなかった自分と、研究との出会い
高校生の頃には「生物の先生もいいな」と思っていましたが、大学で教職課程の単位を取るのが面倒に感じて、その気持ちは自然と消えていきました。就職についても考えましたが、決められた時間に決められた場所で働く自分の姿がまったく想像できなかった。だから就職せずに大学院へ進みました。

「もうちょっと先に行けるか?」と思いながら進学し、東京で2度、アメリカでも研究を経験し、15年ほど前に岡山大学で研究室を持つようになりました。今も「もう少し先に行けるか」を試している感覚は変わっていません。

現在は、酵母という微生物を使って、細胞がどれくらいタンパク質を作りすぎると壊れてしまうのか、その“壊れ方”を調べています。壊れるギリギリまでを見極めることで、生命がどのようにして「壊れずにいるのか」という仕組みを明らかにしようとしています。子どもの頃に不思議に思っていた「なぜ生き物はちゃんと動くのか?」という疑問に、今も付き合い続けている感じです。

最後に:問いを持ち続けるということ
研究には成果が必要で、成果には資金が必要で、資金を得るにはまた成果が必要。そんな循環の中で、学生たちと一緒に実験計画を立てて、データを見て、議論して、また実験して……ということを続けています。英語は得意ではなく、今でも海外ドラマを見て勉強しています。実験結果はたいていうまくいかず、生物に裏切られながらも、なんとか真実に近づこうとしています。

私はクイズ番組があまり好きではありません。人が用意した問いに答えるのが苦手だからです。でも、ゲームは好きです。ルールを素早くつかんで攻略する感覚が、自然のルールを見つける研究とどこか似ているからかもしれません。

学生に「どうしたいの?」「何になりたいの?」とよく聞きますが、正直なところ、私自身もそれを明確に持っていたわけではありません。「もう少し先に行ってみよう」という気持ちだけで進んできた部分が多いです。

知らない大人からこんなことを言われても「だから何?」と思うかもしれません。でも、まったく関係のない誰かよりは、少しだけでも参考になることがあればと思って、今こうして書いてみました。

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実験室でのワンシーン